貝原益軒と『慎思録』
江戸時代の儒学者・貝原益軒といえば、『養生訓』が広く知られていますが、
晩年(1714年頃)に著した『慎思録(しんしろく)』という書もあります。
学問の意義や誠実な生き方、知行合一について原文と訳文で解説されたこの本は、
当時80歳を超えた益軒が、豊富な人生経験をもとに記した修養の書です。
実はこの本、書名の中に私の名前にある「慎」という字が使われていることに気づき、
親近感を覚えてなんとなく手に取ったのがきっかけでした。
読み進めると、含蓄のある言葉がシンプルにまとめられており、
深く共感する言葉に何度も出会いました。
人生の酸いも甘いも経験した益軒だからこそ、
言葉のひとつひとつに実感がこもっています。
益軒の言葉
『身体を養う工夫とは、心をたいらにして気分をなごやかにすること。
これこそは我が身を養い徳性を自然に養成する方法である。』
心身一如
東洋医学や仏教に「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。
心と身体はひとつであり、互いに深く影響し合っているという考え方です。
益軒のこの言葉は、まさにその教えに通じるシンプルで深い言葉だと感じます。
「心をたいらにして、気分をなごやかにする」——この一点を常に意識することで、
すべての状況が自然と整っていくように感じます。
80歳を超えた益軒が人生の極意としてこの言葉を残したことに、
改めて深い感慨を覚えます。
では、どうすれば心をたいらにできるのか
益軒自身も『養生訓』の中で、日常の中でできる具体的な心がけを多く説いています。
現代の私たちにも実践しやすいものとして、こんなことが挙げられます。
・怒りや焦りを感じたら、まず一呼吸おく
・食事や睡眠など、身体の土台を整える
・自然に触れる時間を意識してつくる
・今この瞬間に集中し、余計な心配を手放す
・感謝できることを、一日ひとつ見つける
どれも特別なことではありません。
「心をたいらにする」とは、日常の小さな積み重ねの中にあるのかもしれません。
おわりに
難しいことではなく、ただ心を穏やかに、気分を和らかに・・・
そのことをしながら、日常を丁寧に暮らしていきたいと思います。
参考文献:
『慎思録』(貝原益軒著 講談社学術文庫)

貝原益軒