「君子は道長じ、小人は道消するなり。」
これは、宇宙の道理をまとめた易経の中にある
「地天泰(ちてんたい)」という卦の言葉です。
わたしが特に好きな卦のひとつでもあります。
地天泰は、天下泰平の時を説いた卦とされています。
すべてが調和し、世の中がもっともよく機能している状態。
その時代をつくるのが「君子」であり、乱す存在が「小人」である、
と易経は説いています。
君子と小人とは、何か
東洋思想の文献には、この二つの対比がたびたび登場します。
君子とは、道を治め、道に従って生きる人のことです。
私利私欲にとらわれず、徳を積み、世のため人のために動ける人物。
小人とは、その逆で、道とともに歩むことができず、
欲に引きずられて生きてしまう人のことです。
世の中の秩序が保たれ、経済が健全に機能しているとき、
君子のような人徳を備えた人が重要な位置につき、力を発揮できます。
一方で、世の中が混沌として乱れているとき、
小人がその位置を占めてしまうことが多い。
これは今の時代を見渡しても、深くうなずける話ではないでしょうか。
だれもが最初は、小人から始まる
ただ、ここで大切なことがあります。
どんな人も、最初から君子であるわけではない、ということです。
逆境に追い込まれ、このままでは先がないと気づいたとき、
はじめて「徳を積まなければ」と心から感じる。
その気づきこそが、君子への道の入口だと思うのです。
混沌の中で傷つき、迷い、それでも一歩ずつ道を歩もうとする。
そのプロセスそのものが、人間としての成長であり、
かけがえのない道のりではないでしょうか。
君子と小人の違いをしっかりと理解し、
自分が今どちらの方向に向いているかを問い続けること。
それが、これからを生き抜くうえで、大切な羅針盤になると感じています。
わたし自身も、少しでも君子の道に近づけるよう、
これからも一歩一歩、精進していきたいと思います。
参考文献:『易経一日一言』竹村亞希子編・致知出版社
